牢獄機械文書群

ベトナムへ(世界エスペラント大会)
Mardo 11-a 02:21
■ 世界エスペラント大会、青年大会に参加しました - Mi partoprenis en la UK kaj la IJK

そんなわけで、ベトナムの首都ハノイで催された第97回世界エスペラント大会に参加してきました。

初めての海外、初めての他国人たちとのエスペラントでの会話でしたが、大変面白い時間を過ごすことができました。困ったことや戸惑うこともありましたが、あまり深く考えない性格のためか、憂鬱にならずにすみました。実際にうまく過ごせたのは、周囲の方々が助けてくれたおかげです。


今さらながら、エスペラントとは何か、をちょっと書きます。エスペラントというのは、今から125年前にルドヴィコ・ザメンホフという人が作った言語です。 人工言語の代名詞のように言われることがありますが、エスペラント以前にも人工言語はありました(ヴォラピュクなど)。しかし人工言語というのは、方言化や改良・改造などを試みる人が現れると廃れていってしまいます。それで、ザメンホフは先に接頭辞・接尾辞の基本則を規定して、演繹的に語彙を増やす方向でエスペラントを策定したわけです。

-o 名詞, -a 形容詞, -e 副詞, sen- 無しで(無-), mal- 意味の逆転(非-)
動詞 -as 現在形, -is 過去形, -os 未来形  *すべてこの通り。不規則変化はない。
senkiale 理由なく, なんとなく ← sen- (無しで) kial-o (理由) -e (副詞の接尾辞)

簡単にいうと、先に基本ルールをしっかりと策定したということです。HTML文書を、どんなOSのどんなブラウザでも大体同じに表示できるよう W3C が仕様を規定していますが、エスペラントもまた、どんな母語の人でも意味がつかめるように、基本則によって文法に自由度と厳密さを与えています。スポーツやカードゲームのルールに通じるものがあるとも感じます。


エスペラントを学んでいると言うと、しばしば「すでに広く流通しているのだから英語を学べばいいじゃないか」と言われますが、それは的外れな意見です。英語の背後には英語圏の文化があり、述べる考えもまたそれに沿ったものにしなければいけません。英語を話すということは、英語圏の文化に適した話し方をするということです。

エスペラントはその性質上、背後に特定の国による文化の縛りがありません。語彙はヨーロッパ(ラテン語)由来が主ですが、話し方は自由です。一例を挙げると、人の話にあいづちを打つとき、無理をして "Aha" とか "Hmm" といった英語圏の間投詞を使わなくても、「へえ」とか「ふーん」とかでいいわけです。外国風のジェスチャーを真似なくてよいので、素の日本人のままで話ができます。これは僕にはとても楽に感じました。


それと、基本的に、誰にとっても「学習の必要がある言語」、言い方を僕なりに変えると、誰にとっても「母語とは異質な言語」なので、特定の国に対して引け目を感じることがありません。考えてみてください、もし国際的な場で日本語が公用語に採用されたとして、他の国の人から「漢字は20字くらいしかわからないので、全部ひらがなで書いてください」とリクエストされたら。一万字以上知っている平均的な日本人(日本語話者)の方がコミュニケーション上、非常に優位な立場になることは明白です。


しかしエスペラントはいくらラテン語由来の語彙が多いといっても、ゼロから学ぶしかない言語です。しかも、習得がとても容易な言語です。このことは世界大会に参加して実感したのですが、人と会話するうちに自然と覚えてゆける言語です。

自分が知らない語を相手から教わるのと同様にして、時には相手の知らない語を自分が教えます。相互に教えあうことで、語彙や構文を補完してゆくわけです。

***

そんなこんなで。会場に着いてすぐ、ベトナムの若いエスペランティストから、"Kiel vi fartas?" (調子はどう)と訊かれて "Mi ne komprenas." (わかりません)と答えてしまっていた僕ですが(書き言葉はある程度知っていたけど、"How are you?" に相当する言葉は聞いたことすらなかったということです。)いろんな人にくっついて話をしながら、メモを取っていたおかげで、しばらくすると人と会話ができるようになりました。


大会では、初心者用・中級者用の講座も催されていて、それぞれ数回参加しました。edukado.net という教育機関の s-ino Katalin Kovats の教室は非常にわかりやすい内容で、もちろん大会プログラムですからまったくの初心者はほとんどいなかったと思いますが、しかし改めてABCから体得できたと感じました。


しかし何よりも印象深く、また楽しんだところといえば、エスペラントを介してベトナムをはじめ様々な国の人と文化に触れたことでした。今まで僕にとって、エスペラントは主に小説等を読むための書き言葉でしたが、大会に参加してみて、この言語が意思疎通を図るツールだということが実感できました。まさか、日本人と日本語で話すのとまったく変わらないテンションで話せるものだとは思ってもみませんでした。

相変わらず、話すのはすこし苦手ですが、相手の話を聴くことはかなり楽でしたので、前の記事で少し触れました SPAC の演劇作品「マハーバーラタ」の原作(神話)について、インドネシアの samideanoj (同志、仲間たち)からいろいろと話を聞くことができました。

(続く)

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